最低賃金について

1.賃金額に対する規制

(1)最低賃金法による賃金額の規制

 「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきもの」(労働基準法第2条第1項)ですが、労働者の生活の経済的基盤となる賃金額は、極めて重要な労働条件です。また、一般的に使用者に比べて経済的立場が弱い労働者は、極めて低廉な賃金で労働を提供せざるを得なくなる恐れがあります。そこで、最低賃金法という法律で賃金の支払い額に最低限度、いわゆる最低賃金の規制が設けられています。
 最低賃金額は、時間によって定めるものとされています(最低賃金法第3条)。
 労働者の同意があっても最低賃金を下回る賃金での契約は認められず、例え最低賃金より低い賃金で労働契約を締結したとしても、その部分については無効とされ、最低賃金額で契約したものとみなされます(最低賃金法第4条第2項)。

(2)地域別最低賃金と特定最低賃金

 最低賃金には、各都道府県地域のすべての労働者とその使用者に適用される「地域別最低賃金」と、各特定の産業に従事する労働者とその使用者に適用される「特定最低賃金」があります。
 「地域別最低賃金」は、パートタイマー、アルバイト、非常勤職員、臨時職員、嘱託などの雇用形態や呼称には関係なく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されますが、「特定最低賃金」は、18歳未満又は65歳以上の労働者、雇入れ後一定期間未満の技能習得中の労働者、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する労働者には適用されないこととなっています。
 「地域別最低賃金」も「特定最低賃金」も、それぞれ都道府県ごとに定められていますが、これらの最低賃金が競合する場合においては、それらにおいて定められている最低賃金額のうち最高のものが最低賃金として適用されます(最低賃金法第6条第1項)。

【厚生労働省ホームページ公表資料】

 

(3)最低賃金の減額の特例

 最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため、次の労働者については、使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、個別に最低賃金の減額することができる特例が認められています(最低賃金法第7条)。
①精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
②試の使用期間中の者
③職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第二十四条第一項の認定を受けて行われる職業訓練のうち職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者であって厚生労働省令で定めるもの
④軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省令で定める者

(4)派遣労働者の最低賃金

 派遣労働者については、派遣元事業場に適用される最低賃金ではなく、派遣先事業場に適用される最低賃金が適用されます。例えば、兵庫県の派遣会社から派遣先企業の大阪府にある事業場に派遣されて労働する派遣労働者の場合には、大阪府の地域別最低賃金(その派遣先の事業場に特定最低賃金が適用される場合は特定最低賃金)が適用されます(最低賃金法第13条)。

 

 

2.最低賃金の適用の実務

 

(1)最低賃金法の規制対象となる賃金

 次の賃金は最低賃金の対象とならないものとされています(最低賃金法第4条第3項)。したがって、最低賃金による基準を満たしているかどうかの計算においては、支払われる賃金から以下の賃金を除外した賃金で計算する必要があります。
【最低賃金の対象とならない賃金】
(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4)所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

 

(2)最低賃金の確認の計算

 実務においては、(1)で説明した最低賃金法の規制対象となる賃金の額が最低賃金額以上となっているかどうかの確認が必要となります。最低賃金の対象となる賃金額を以下の方法で計算し、当該事業場に適用されているる最低賃金額と方法で比較して確認します。

【最低賃金の計算方法と確認】
1. 時間給の場合
「時間給」が、最低賃金額(時間額)以上となっているかを確認。
2. 日給の場合
「日給÷1日の所定労働時間」が、最低賃金額(時間額)以上となっているかを確認。
※ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、
「日給」が、最低賃金額(日額)以上となっているかを確認。
3. 月給の場合
「月給÷1箇月平均所定労働時間が最低賃金額(時間額)」以上となっているかを確認。
4. 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
「出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除した金額」が、最低賃金(時間額)
5. 上記1〜4の組み合わせの場合
 それぞれ賃金ごとに上記の計算方法で時間額に換算し、それらの合計額が、最低賃金額(時間額)以上となっているかを確認。
 ※例えば基本給が日給制で各手当(能率手当等)が出来高制の場合は、それぞれ上の2、 4の式により時間額に換算し、それらの合計額が、最低賃金額(時間額)以上となっているかを確認。

 

(3)最低賃金の周知義務

 最低賃金の適用を受ける使用者は、次の事項を常時作業場の見やすい場所に掲示し、又はその他の方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければなりません(最低賃金法第8条、同法施行規則第6条)。
①最低賃金の適用を受ける労働者の範囲及びこれらの労働者に係る最低賃金額
②最低賃金に算入しない賃金
③効力発生年月日

2020年04月03日